センター現代文一問一答必修編

第 16 講 小説

ては少しふ 納得したことだ 裕生は何と言ったの 惑って……〈かぐやひめ  「竹取物語?」  「いいえ、 〈かぐやひめ〉の絵 皆と似たりよったりの答えをするの くその絵本がどのように美しかったか、 たかを裕生が居直って話し始めたとき、尚子 ふたりは語り始めた。どちらも積極的に人に近づ 機会もそう多くはなかった。 たまたま部室でふたりき た。普通ならば二、 三時間で済むような内容をほぼ一年か どちらも語るよりは聞きたがり、それでいて心のどこかでは耳 ろうとして失敗した。  「 〈 二 (注2) 十億光年の孤独〉を読んだ?」  「……うん。泣いた、僕」  「 キ (注3) ルケゴールが……もちろん、読んだって半分もわからないんだけど……本を開い  「 〈死に至る病〉 少なくともあの頃、裕生と尚子は似た者どうしだった。自分を溶かし出してしまうよう き出す影や、いっそのこと存在をかくまってくれる

〈わたしにとっての真理〉……僕らをひとことで殺す文句だ」

摂 せつ の挿絵のある紫の表紙の。幼稚

闇 やみ を愛し、晴天の日よりは雨の日の方が機嫌がよかった。十代半ばにして生

イ (注1) ンテリぶるのが気恥ずかしかったの

頃 ころ 、僕はどうしてもそれが欲しく

寧 むし ろ輪郭をはっきりと描

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