センター現代文一問一答必修編

第 18 講 小説

次の文章は、北杜夫の小 動神経が発達し、口笛のうま は自分の絵の才能を自覚し、さ 文はそれに続く話である。これを読 あやつられたように、僕はランドセルを片手 いてみた。やはりがらんとした教室の四つの台の いそ でランドセルから画用紙をとりだすと、ひとつ ば 叱 しか られまいという気持ちが、とうとう僕を大胆にした。落ち て、次の紙にはぶっつけに花弁から描きはじめた。ひとつの花 も僕の心にかなった。気まま かなり とこすると、 ぶい光沢がう れてきた。いつかの展覧会にだした僕の れたのだった。そのうちに、ときたま廊下をとおる らなくなった。熟れきった花粉 それがすこし そがれの光線が、雄しべ雌しべのかげが バックの濃緑の布が、微妙な色あいを映して してもあらわしたかった。窓からながれて る光が弱まるにつ 、そのさゆらぐかげは刻々 第 18講 歪 ゆが んで大きすぎる花自体を巧みにつよめてくれるようであった。僕は花にだけ熱中し 無 む 雑 ぞう 作 さ に、 僕はやわらかいパステルをあやつった。白くぬられた花弁を 跫 あし 音 おと も、かすかに校庭から伝わってくる放課後の遊び声も、すべて気にかか 囊 のう を描いたころから、 僕は次第に我をわすれた。花瓶や茎や葉はごくざっとなぞっ 5 分 制限時間

従 い と こ 兄 に依然としてコンプレック

枇 び 杷 わ の絵に、図画の教師はそうした技法をほどこしてく

窺 うかが われた。そっと僕は足をふみいれ、

実施日:

捉 とら えがたい

爪 つめ でひとところぐっ

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