センター現代文一問一答必修編
第 24 講 小説
を 脇 わき にひろげた りあい、甘やか た。まだ小さかった 古い家の二階で細々と養 んでいた。同居していた息 分はまだ片手間にでも養蚕にか 前をつけることもないではなかった ぽい芋虫の親玉と自分の名前がむすびつ 触ってごらん、と言われるままに触れたその 袋の、ところどころ穴があいたふうの表面の匂い しょに、あのグロテスクな肌と糸の美しさの、驚くべ いだから絹江になったの、絹代ちゃんとこみたいに蚕を飼 いたともだちが突っかかるように言った う、ふつうの女の子には気味の悪いものでしかない時代に入ってい どろおどろしい記憶がなつかしさをともなう思い出にすりかわったので 出てきたすすや、油を燃やしたあとのすすを、 うわずみだから、絹代さんが感じ こ は、そのとおり、ただしい、と思います その死んだもの エネルギーをちょうだいしてる。重油とおなじ、深くて、怖 なぜだろう、絹代さんはそのときはじめて、陽平さんのこれまでの人生を、あれこれ聞 毎日顔を合わせて食事をして るこの不思議な男の人の過去と未来を知りた 気持ちがどん
台 せり 詞 ふ が、絹代さんの頭にまだこびりついている。生家の周辺を離れ 膠 にかわ であわせたものでしょう、膠っていうやつが、ほら、もう、生き物の骨と皮
想 おも いを 馳 は せた。あたしは肌がつるつるさらさらして絹みた
函 はこ の底をわさわさとうごめいている白
嗅 か いだとたん、かつてのお
鹿 しか 革 がわ の手
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