センター現代文一問一答必修編

次の文章は、遠藤周作 を読んで、後の問いに答え で消耗しつくしている。いくら書いても書きたりないが、た 七年前、幾度もここに足を運んでこの木彫のように眼を射る光の を持つと、生活のためにこの光への執着を少しずつ失ってしまったよ い ト (注3) ゥイードのコートまで作れるような余裕ある金を得ることができたのであ もう一つの安易な声を聞い ことを心の隅でいつも恥ずかしく思っている。 空は曇っていたが、それと同じように少し れをふかしながら今度は少し当てもなく河岸にそって歩きはじめた。 岸の石の手すりに手をかけている 妹の部屋を尋ねてみようかという気がふと胸のなかに起 第 14講 あつい 色 硝 ガ ラ ス 子 をはめこんだ窓から晩秋の微光が シ (注1) ョコラを飲みほすと私は 「 (注2) マルテの手記」で描写したゴブラン織りの一角 たちが小鳥に の前にたちどまり、私は、 餌 えさ をやっている。今どきの時刻には館内に はリルケが わからない木彫の

制限時

基 キリスト 督 の死顔

漸 ようや く私が 。脂汗と苦しみとが

5 分

路 みち をおりて、中世美術館の 喪 うしな った大切なものの一つの前に進むのだ。

洩 も れて、館内には二、 三人の番人が隅に腰を

憂 ゆう 鬱 うつ な気持ちで私は美術館を出た。

滲 にじ んでいる残酷な額。

鉄 てつ 柵 さく の前に出る。

A 私が喪った大切なものの一つ。誰が作ったのか 頰 ほお 骨 ぼね が突き出て鼻の肉もそげている。唇は残った気力ま

橡 とちのき や 楡 にれ の金色の落葉が芝生にちらばって、

煙 た ば こ 草 屋でつよい

眼 め を射るような光が発しているのだ。 創 つく りたいと思った。だが日本に戻り家庭

匂 にお いのする煙草の箱を買い、そ

実施日:

誰 だれ も訪れてはいない。私

囁 ささや きに耳を

塞 ふさ いで、

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