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たえぬ思ひによろ
らすに、明けむ年もろ
べき遣唐副使になしたまふ
将も皇女もいみじきことにおぼ
すぐれたるを選ばるるわざなれば、
ちからなし。弁の君ひとかたならず、血
をながせど、いづれも心にかなふわざ しあ
らねば、皇女つひに参りたまひぬ。ときめき
たまふこといみじきを見聞くに、いとどあぢ
きなさまさりて、かくなむ。
おほかたは憂き目を見ずて ろこしの雲
のはてにも入らましものを
朝夕の宮仕へにつけてたへ たき心をも、
なかなかひとかたに思ひ絶ゆ かり漕ぎ離れ
むも、ひとつにはうれしけれど、親たちの気
色をはじめ、おはせむさまをだに見聞かざら
第2講
『松
弁の君が
尽きない苦悩のうち
日夜を送っていると、来
唐副使に
弁の君を
任命なさることになる宣旨が
父の
大将
も
母の明日香の皇女
も、辛いことだとお思いになるが
秀な人物をお選びになることなので、
きない。弁の君の悲しみはひと通りでなく
だったが、
神奈備の皇女の入内をとどめることも、遣唐使
退することも、弁の君にとっては
どちらも思いどおりになるも
のではないので、
神奈備の皇女は
ついに入内なさってしまった。
宮中で
御寵愛を受けてたいそう栄えていらっしゃることを見聞
きするにつけて、
弁の君は
ますますやりきれなさがつのって、
このように歌を詠む。
おほかたは…=普通は、 んな辛い目にあわずに遠い唐土
の雲海の奥深い果てにまで入っていくだろうも を私はいろ
いろと辛い思いをすることだ。
弁の君は
朝夕の宮仕えにつけて耐えがたい気持ちも、かえっ




