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見れば、 お 渚に立てる松ど

まなど、えもいはず

へ。種しあれば、かか

る松はありけるものを」な

し頭もたげたり。朝日影のは

でたる、苫のひまひまもはしたなき

に、寝くたれ髪のいたう乱れたるを掻き

つつ、恥づかしげにまぎらはしゐたるまみの

いとをかしげなるを、 「今よりはかくて心の

どかに見るべし」 と思ふもうれしきものから

「あとより漕ぎ来る舟は追ひ来る人にや」と、

なほ胸つぶらはしくおぼゆ。

からうじてなにが の浦に寄せぬ。 舟人 「朝

のもの参れよ。ふし給ひて みは、いとど御

心地も悪しかんなるものを」など言ふ。あや

しきまかなひを見も入れずうちふしたるを、

「舟の酔ひは、浜づらを歩くなむ、いととく

頭を持ち上 屋の隙間隙間も

女は

寝起きの

髪がひどく乱れてい

らわしている目元がとて

男は

「これか

らはこう てゆっくりと見ら

のの、 「後ろから漕いで来る舟は

であろうか」と、 やはり心配で胸がつ

やっとのことで何と いう浦に舟を寄せ

召し上がりなさい。寝てばかりいらっしゃっ

気分も悪いでしょうから」などと言 。

女は

粗末な食事に見向

きもしないで横になって るのを

男は

「船酔いは、浜辺を歩

くと、たいそう早く醒めるそ だから」と言って、

女を

無理に

せきたてて舟を降りた。次第に気持ちが落ち着いてきたので、

人目につかない松の陰に座って、これまで ことや、月日 隔

てられて

女に会うのが

待ち遠しかったことなどを語る。心の中

では、あれこれと考え続けることなどが多い だが、お互いに

気を紛らわせるようにして貝などを拾う。

男が

荒磯の…=荒磯の波に揺れて漂ううつせ貝も二枚ともそ