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かくてなほ、その
とどおぼつか く思ひ
るに、行きたがひて、彼方
をおこせたり。今宵もさはるよ
つかひもなく、思ひしをれたるに、
るころ、かの女まどひ来たり。さ は
たよりの消息に、 「今宵さへさはりあらむは
心のほどもおぼつかなし。今は立ち返るも、
はしたなる身になりぬれば、このままに、い
づちもいづちも行きかくれて、世をものがれ
ぬべし」など言ひつかはしつるに、驚きて、
わりなく忍び出でぬるなるべし。やがて絶
え入りてうつし心なし。もの思ひ騒ぎては、
「例もかうや に絶え入る折々あ とは聞け
ど、今し にはかにかかるさま をいかに
せむ」と思ひ惑はれて、 いみじうかなしき 、
第5講
『う
こうしてやはり、
男は
いっ
そう気掛かりで思い悩ん
なって、
女のほうから
下仕えの女を寄越した。今夜
い旨を言うので、
男は
待つ甲斐もなく、がっかりしてい
初夜を過ぎるころ、あの女があわてて
のは、こちら(
=
男
)からの手紙に、 「今夜までも都合が悪く
て会えないならば、あなたの気持ち よくわか
う故郷に戻るのも、中途半端な身になっ しまった
ままどこかへ姿を消して、 俗世を捨ててしまおう (=出
などと書いて送ったので、
女は
驚いて、仕方なく人目を忍んで
出てきたのだろう。
女は
そのまま気を失って意識がない。
男は
動揺し 、 「
女は
ふだんもこのように時々気を失うことがある
とは聞いていたけれど、たった今突然このように気を失ってい
るのをどうしたものだろうか」と途方に暮れずにはいられず、
ひどく悲しいので、神仏に祈りながら、
女を
しっかりと抱きし
めて、薬湯などを飲ませたとこ 、
女が
やっとのことで意識を




