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のかたしき 心ひけど、 この
をさなきわらはべ、
犬すらも、朝夕目馴れ
りければ、しかすがに、別
心ぐるしう、むねつとふたがる
水無月のつごもりの日、本洗馬の
なむと欲りするに、いましばと止めて、
里の人び 、うまのはなむけして、とりどり
に歌ながめてわれに贈りける。宿のぬし可児
永通、
行く旅をめぐりも帰 この里の馴れ わ
がやを住処とはして
あさゆふ、こととひむつびたる政員、
別れては雲路はるかにへだつ も雁の往
来のたよりをぞまつ
政員が家にとへば、あるじの母 む、みづ
はさしたる姿して出でたちけるに ふたたび
寝そべる犬
私を
見馴れてい
こうに怪しみ見
ますます心苦 くな
六月の三十日、本洗馬
く居てください、と引きとめ
るしにと、あれこれ歌を詠んで私
人の可児永通の歌は、
行く旅を…=方々を旅してまわった後
帰って来てほしい。馴れたわたしの家を自分の
て。
毎日、親しく話し合った政員の歌は、
別れては…=お別れした後は、たとえどんなに遠く隔た
ていようとも、雁の往来に託してでも、あなたから お便り
を心待ちにしています。
政員の家を訪ねたところ、主人(=
政員
)の母が年老いた姿
で出て来られたが、
私が
、またお伺いしますよ、と言ったら、
またと
あなたは
おっしゃいますが、私はもう年老いた身です。
こんなに老いぼれてしまっては、明日にも消えようとする か




