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この中納言は、か

のをりをりばかりあり

のやうにまじろひたまふこ

に、入道殿の土御門殿にて御遊

やうのことに権中納言のなきこそ、

ざうしけれ」とのたまはせて、わざと御

きこえさせたまふほど、盃あまたたびになり

て、人々乱れたまひて、紐おしや てさぶら

はるるに、この中納言参りたまへば、うるは

しくなりて、 ゐなほりなどせられければ、殿、

「とく御紐とかせたまへ。ことやぶれ侍りぬ

べし」 おほせられければ、かしこまりて逗

留したまふを、公信卿うしろより、 「ときた

てまつらむ」とて寄りたまふに、中納言御気

色あしくなりて、 「隆家 不運なる とこそ

あれ、そこたちにかやうにせら べき身にも

この中納言隆家は

はお出掛けなさって、以

かったけれど、道長入道殿が

なさった時に、 「このようなとき

はりさびしいことだ」とおっしゃって

りを遣わしなさったその間に、酒杯がどん

酔い乱れなさって、

直衣などの衿の

紐を解いてくつろいでおら

れましたところに、この中納言隆家殿が参上なさっ

んなが

きちんとなって、身なりを正したりなさったので、道長

殿が「はやく衿の紐をお解きください。せっかくの興がさめ

しまいましょう」とおっしゃったので、

隆家殿は

恐縮してため

らいなさっていたところ、公信卿が後ろから、 「私が解いて差

し上げま ょう」と言って近寄って来られた で、中納言殿は

気分を害されて、 「私、隆家は

左遷されるような

不運な身の上

ではあるが、あなたたちにこのように馴れ馴れしく扱われるよ

うな身ではない」と声を荒げておっしゃっ ので、人々が顔色

第3講

 『大