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18
いとをかしうあは
天暦の御時に、清涼殿
たりしかば、求めさせたま
ぬしの蔵人にていますがりし時
りて、 「若き者どもはえ見知らじ。
めよ」とのたまひしかば、一京まかり歩
かども、侍らざりしに、西京のそこそこなる
家に、色濃く咲きたる木の 様体うつく き
が侍りしを、 掘りとりしかば、 家あるじの、
「木
にこれ結ひつけて持てまゐれ」といはせた
ひしかば、あるやうこそはとて、持てまゐり
てさぶらひしを、
「なにぞ」 とて御覧じければ、
女の手にて書きて りける、
勅なればいともかしこしうぐひすの宿は
と問はばいかが答へむ
たいそう趣があり
この天暦という
村上
帝
の御代に、清涼殿の御前
てしまったので、
帝
が代わりの木を手に入れよう
探させな
さったが、だれそれが蔵人でいら
この勅命を
お
受けして、
「
若い者たちは梅の木の良し悪しを見分
おまえが探せ
」
と
その蔵人が
おっしゃったので、
私(=繁樹)
が
都中を探し歩いたけれども、適当な梅の木がご
した 、西の都のどこそこにある家に、色濃く咲い
で
、様
子が見事な
木が
ありましたのを見つけて、堀りとったところ、
その家の主人 、 「その梅の木に れを結びつけて持って参
しなさい」と
召し使いに
言わせなさったので、何か訳があるの
だろうと思って、
私(=繁樹)が
それを持って内裏に参上しま
したのを、
帝
は
、 「これは何か」とおっ ゃってご覧になった
ところ、女の筆跡で書いてありました歌は、
勅なれば…=
帝の
仰せなので非常に恐れ多いことです。
お
召しの梅の木は差し上げますが、この木にいつも来慣れてい
第1講
『大