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師走にもなりぬ。

すさまじき日、いとと

二三人ばかりして物語など

く更けぬとて、人はみないぬれ

まれぬに、やをら起き出でて見るに

雲がくれたりつる月の、浮雲まがはずな

がら、山の端ちかき光のほのかに見ゆるは、

七日の月なりけり。見し夜のかぎりも今宵ぞ

かしと思ひ出づるに、 ただその折の心地して、

さだかにも覚えずなりぬる御面影さへ さ

向ひたる心地するに、まづかきくらす涙に月

の影も見えずとて、仏などの見え給ひ に

やと思ふに、 恥づかしくも頼もし もな ぬ。

さるは月日 そへて堪へ忍ぶべき心地もせ

ず、心尽くしなることのみまされば、よしや

思へばやすきと、ことわりに思ひ立ちぬる心

陰暦の十二月にも

降って風もとても激しく

降ろしてまわって、 、 三人

に、夜もたいそう更けたと言って

が、

私は

まったく寝ることができないので、そ

みると、宵の刻には雲隠れしていた月が、

がら、山の端に近い光がほのかに見えるのは

たのだなあ。

あの方を最後に

見た夜も、ちょうど今夜と同じ七

日の月の夜だったよと思い出すと、 まるでその折の心地

はっきりとは思い出せなくなってしま た

あの方の

御面影まで

も、

私があの方と

今差し向かっているような心地がする時に、

真っ先に心が暗くなってしまう涙に月の光も見えないといっ

て、仏などがお姿を現しなさったのであろうかと思うと、恥ず

かしくも頼もしくもなった。

そうはいうものの 月日が経つにしたがって堪え忍ぶことの

できる心地もせず、

気をもむことだけがまさってくるので、

ええ、

第2講

 『う