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のつきぬる しかりける。 「

と言へばえに、悲し

春ののどやかなるに

る手習の反古など、やりか

の御文どもを取り出でてみれば

づきそめしはじめよ 、 冬草枯れ果

折々のあはれ忍びがたき節々を、うちと

聞えかはしけることの積もりにけるほども、

今はと見る あはれ浅からぬなかに、いつぞ

や、常よりも目とどまりぬらんかしと覚ゆる

ほどに こなたの主、 「今宵はいと寂しくも

の恐ろしき心地するに、ここに臥 給へ」と

て、我がかたへも帰らずなりぬ。あなむつか

しと覚ゆれど、 せめて心の鬼も恐ろしけ ば、

「帰りなん」とも言はで臥しぬ。

ままよと決

る決心がついた

仏様の

霊験であろうか

とうれしかった。 「

て言おうと思っても言え

春ののどかな日に、なんと

た紙などを破ってしまうついでに

あの人の

お手紙などを取り

出してみると、梅の枝が色づき始めた

てるまで、四季折々のしみじみとした耐え

打ち解けて書き交わした文章が積も た のを

これが最後と思って見てみると、感慨が浅くない中

たいいつのころのものだったかなあ、といつもよりも目

まっているよ、と思っているうちに こちらの部屋の主が、

晩はとても寂しくなんとなく恐ろしい心地がするので、ここに

一緒に横になってください」 言うので、

私も

自分の部屋へも

帰らなくなってしまった。ああめんどう と思うけれども、と

ても自分の心の鬼の出家の決意も恐ろしい で、 「

自分の部屋

帰ろう」とも言わないで

そのままその部屋で

横になった。