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よりおこせ のを見せんと、

ながめて、 「はや咲

知らぬ間に」と、言の

しをとどめ、はかなき筆

れなるこ をのみ書きおけるは

見にも見よとなるべし。つひに弥生

日、浦島が子の箱開けしくやしさ、何に

ん。遺言たがへず、かの堂のうちにをさめ、

跡とふわざなど営むを とまりて見る老いの

命、返す返すつれなし。

四、 五日 きたので、

娘が

早く見たがって

瓶に挿して置いたと

娘は

ちょっとながめて、

いたことよ。病気の め

と、一つ一つの言葉にも懐か

ちょっとした筆の気まぐれに書い

ことばかり書き残しているのは、

この先

長い世の形見としても

見てほしいということな だろう。ついに

娘は亡くなって

浦島の子が玉手箱を開けた時のような悔しさ

は、何にたとえよう 。

娘の

遺言を違えることなく、あの挙白

堂の中におさめ、死後を弔う法事などを営む を、この

どまってそれを見る年老いた命は、かえすがえすも思うに任

ないものである。