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かくて過ぎゆくほ
はなけれど、 おのづか
昼なども折々は渡らせ給う
ぎなど、さまざまの御遊びども
使の君は宮の御姿をつくづくと見る
夜な夜なの月影に、さだかにはあらねど
人に違ふところなければ、 「世 かかるま
で通ひたる人に似たる人もあるにや」と思ふ
に、見慣るるままには、物のたまふ声、けは
ひ、様体、みなその人なれば、あまり心ひと
つに思ふも心もと くて、侍従にしかじかと
語り給へば、 「さればよ、我もいと不思議な
ることども侍り。かのたびたびの御供に候ひ
し蔵人とかや言ひし人、ここに候ひて、 と
さら『宮の御乳母子なり』とて、人もおろか
ならず思ふさまな 。昨日も内裏へ参らせ給
第6講
『兵
こうして月日が過
兵部卿の宮の
お気持ちが
右大臣の姫君に
傾くというわけではない
和らぐこともあるのであろう
宮は
昼などにも時折
姫君の元
へ
お通いになられて、碁を打ったり
さまざまなお遊びをなさるの 、按察
よく見ると、昔夜ごとに月の光の下で、は
逢い見た人と違うところがない で、 「この世
どまでに
我が元へ
通ってきた人(昔の恋人)に似ている人もい
るのであろうか」と思うが、
宮のお姿を
見慣れるにつれて、何
かおっしゃる声、 立ち居振る舞い、 姿かたちなど、 みなその
の恋人)に違いないので、
按察使の君は自分ひとりの
心の中に
収めて思い込むのも気がかりで、自分の乳母の娘にあた 侍従
にこれこれと事情をお話になると、
侍従は
「やっぱりそうです
よ、 私にもとても不思議に思われることがたくさんございます。
以前
あのお方の
たびたびのお供にお仕えしていた蔵人とかいっ
た人が、こちらに参上して、わざわざ『自分は宮の御乳母の子




