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は寄り臥し うて、按察使の
ふ。さまざまの絵な
籬に菊など書き給うて
かし」とて、持たせ へる
う塗らせ給へば 按察使の君、
うち笑ひて、その傍らに、
初霜も置きあへぬものを白菊の早くも
つる色を見すらん
と、いと小さく書き付け侍るを、姫君もほほ
笑み給ひつつ御覧ず。
をりふし、宮は音もなく入 ふに 御
硯なども取り隠すべきひまさへなく みなす
べりぬるに、姫君もまぎらはしに扇をまさぐ
りつつ寄りゐ給ふ。按察使の君 、人より異
にいたう苦しくて、御几帳の後ろよりすべり
出でぬるを、いかがおぼしけむ しばし見や
らせ給ひて、かの跡はかなく見な 給ふ人の
がこぼれる
ある日の昼ご
姫君の屋敷は
たいそう静かで
ていて、 「宮も今朝
とで、女房達は、
姫君の
御前でくつろいで、遊び
姫君は物に寄りかかって横に
向くままに書いていらっしゃって
に書かせなさる。 ろいろな絵など気
姫君は
垣根に咲く菊の絵などお書きになられて、
ても良くないわ」とおっしゃって、お持ちにな
ても濃くお塗りなさる 、按察使の君は、ほんのり
て笑みをうかべ、その絵のわきに、
初霜も…=初霜もまだ降りないのに、どうして白菊は早く
も色変わりしているのでしょうか。
と、たいそう小さく書きつけましたのを、姫君もほほ笑みなさ
りながらご覧になる。
ちょうどその時、宮はお部屋に音も立てずにお入りなさる
で、
女房達は
硯箱なども隠すことができる暇さえなく、みな
そっと退出してしまっ が、姫君もごまかすように扇を弄びな




