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ふとて、出 の御文もて往に
とて忙はしげなるさ
将は仮の御名にて、宮
や」と。
いとど恥づかしく悲しくて、
見つけられ奉りたらん時、いかがは
はかなく聞かれんとこそ思ひしを、かか
まにて見え奉らん、 いと恥づかしきことにも
と、今さら苦しければ 宮おはします時はか
しこうすべりつつ見え奉らじ すまふを、
「人
もいかなることにかと とがめんか」と、こ
れも苦しう、 「とても くても思ひは絶えぬ
身なりけり」と思ふには、例の、涙ぞまづこ
ぼれぬる。
ある昼つかた、いとしめやか 、 「宮も
今朝より内裏におはしま ぬ」とて、人々、
御前にてうちとけつつ、戯れ遊び給ふ。姫君
どもである
お屋敷の人
並一通
りでなく思って
ことで、 お出かけな
て行ったお供の方も、 『
そうな様子でございましたが
のお名前であって、実は宮でいら
言う。
それを聞いて、按察使の君は
ますますきまりが悪く悲しく
なって、 「それなら
宮に
お見つけられ申し上げたような時は、
どうしようか。
宮の前から姿を消した私の行方は
わからないと
聞いておられるだろうとばかり思っていたのに、このよ
様で
宮に
お会い申し上げるのは、とてもきまりが悪いことよ」
と、今さらにつらいので、宮が
姫君の元へ
お越しになる時はう
まくその場をそっと抜け出しては
宮に
お会い申し上げないよう
にしよう 引き下がるが、 「
他の女房たちも
いったいどういう
ことであろうかと
私の様子を
見咎めるのではないか」と、それ
もまた心配で、 「いずれにしても悩みはつきないわが身である
なあ」と思う つけて、
按察使の君は
いつものように、まず涙




