Table of Contents Table of Contents
Next Page  97 / 135 Previous Page
Information
Show Menu
Next Page 97 / 135 Previous Page
Page Background

97

ふとて、出 の御文もて往に

とて忙はしげなるさ

将は仮の御名にて、宮

や」と。

いとど恥づかしく悲しくて、

見つけられ奉りたらん時、いかがは

はかなく聞かれんとこそ思ひしを、かか

まにて見え奉らん、 いと恥づかしきことにも

と、今さら苦しければ 宮おはします時はか

しこうすべりつつ見え奉らじ すまふを、

「人

もいかなることにかと とがめんか」と、こ

れも苦しう、 「とても くても思ひは絶えぬ

身なりけり」と思ふには、例の、涙ぞまづこ

ぼれぬる。

ある昼つかた、いとしめやか 、 「宮も

今朝より内裏におはしま ぬ」とて、人々、

御前にてうちとけつつ、戯れ遊び給ふ。姫君

どもである

お屋敷の人

並一通

りでなく思って

ことで、 お出かけな

て行ったお供の方も、 『

そうな様子でございましたが

のお名前であって、実は宮でいら

言う。

それを聞いて、按察使の君は

ますますきまりが悪く悲しく

なって、 「それなら

宮に

お見つけられ申し上げたような時は、

どうしようか。

宮の前から姿を消した私の行方は

わからないと

聞いておられるだろうとばかり思っていたのに、このよ

様で

宮に

お会い申し上げるのは、とてもきまりが悪いことよ」

と、今さらにつらいので、宮が

姫君の元へ

お越しになる時はう

まくその場をそっと抜け出しては

宮に

お会い申し上げないよう

にしよう 引き下がるが、 「

他の女房たちも

いったいどういう

ことであろうかと

私の様子を

見咎めるのではないか」と、それ

もまた心配で、 「いずれにしても悩みはつきないわが身である

なあ」と思う つけて、

按察使の君は

いつものように、まず涙