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少弐、任はてて上
きほどに、ことなる勢
つ、すがすがしくも出で立
病して、死なむとする心地にも
ばかりにもなりたまへるさまの、ゆ
でをかしげなるを見 てまつりて、我さ
ち棄てたてまつりて、いかなるさまに放れた
まはむとすらむ。あやし 所に生ひ出でたま
ふも、かたじけなく思ひきこゆれ 。いつし
かも京に率てたてまつりて、さるべき人にも
知らせたてまつりて、御宿世にまかせて見た
てまつ むにも、都は広き所なれば、いと心
やすかるべしと、思ひいそぎつるを、ここな
がら命たへずなりぬることと、うしろめたが
る。男子三人あるに、 「ただこの姫君京に率
てたてまつるべきことを思へ。わが身の孝を
少弐は
大宰府の
任期が終わって上京
京まで
は
遠い旅程であり、そのう
ぐずしていて、思いきって旅
病気にかかって、 いよいよ死のう
玉鬘
)が十歳ぐらいに成長なさっている姿
いのを見申し上げて、 「この私までもが
姫君を
見捨て申し上げ
て、どんなふうに流浪なさることであろうか。
おいて成長なさるのも、恐れ多 とと思い申し上
も、早いうちに京に連れ申し上げて、しかるべき人(=
玉鬘の
本当の父である内大臣
)にもお知らせ申し上げて、その後は御
運勢にまかせて見申し上げるとしても、 都は広いところなので、
とても安心であろう」と 心の準備をしてきたが、
少弐は
この
まま命が絶えてしまうとはと、心配に思う。
少弐には
男の子が
三人いたが、それらに、 「ただこの姫君を京にお連れ申し上げ
なくてはならない、と肝に銘じておけ。私 死後 供養のこと
を考えるな」と言い置いた。
第3講
『源