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りぬ。日ご 人をば、いまは

これにぞ皆人はかか

む。などかくは」と、

ふ人多かり。ものはいはね

目は見ゆるほどに、いたはしと

りきて、 「親はひとりやはある。な

あるぞ」とて、湯をせめて沃るれば、飲

どして、身などなほりもてゆく。さて、なほ

思ふにも、生きたるまじきこ ちする 、こ

の過ぎぬる人、わづらひつる日ごろ、 な

どもいはず、ただいふこととては、 くもの

はかなくてあり経るを夜昼嘆きにしかば、

「あ

はれ、いかにしたまはむずらむ しばし

ば息の下にもものせられしを思ひ出づるに、

かうまでもあるなりける。人聞きつけてもの

したり。われはものもおぼえねば、知りも知

られず、人ぞ会ひて、 「しかじかなむものし

て、

私のほうに

人々はかか

うしようか。ど

き惑 人が大勢いる

私は

口はきけないが、ま

目は見える。そこへ、

私を

気の毒だと思ってくれる

父が

近寄っ

て来て、 「親は

母親

一人だけだろうか、いや、そ

どうしてこのようであるのか」と

ぎ込むので、

私は

それを飲んだりしているうちに、体が

回復していく。さて やはりどう思っても

気がしないのは、この亡くなってしまった

母が

、患っていたこ

ろに、他のことは何も言わず、ただ言うこととして

私が

ねがねこのように頼りない生活を続けていることを絶え

ていたので、

「ああ、

あなたは

これからはどうなさることだろう」

と、たびたび苦しい息 下から言われたのを思い出すと、絶え

入るくらい切なくなってしまうのだった。

夫の兼家が

聞きつけ

て訪ねて来た。私は意識がはっきりしな の 、 何もわからず、

侍女が

会って、

「これこれの様子でいらっしゃいます」 と言うと、

夫は

泣いて、穢れも気にせず入って来ようとする様子だったの

で、 「とんでもなく不都合でございます」などと

侍女たちが