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また、養和のころ

ず。二年があひだ、世

しき事侍りき。或いは春夏

大風、洪水など、よからぬ事ど

て、五穀ことごとくならず。夏植う

みありて、秋刈り、冬収むるぞめきはな

これによりて、国々の民、或いは地をすてて

境を出で、或いは家を忘れて山に住む。さま

ざまのお祈りはじまりて、なべてならぬ法ど

も行はるれど、さらにそのしるしなし。京の

ならひ、何わざにつけても みな もとは田

舎をこそ頼めるに、 絶えて上るものなければ、

さのみやは操もつくりあへむ。 念じわびつつ、

さまざまの財物かたはしより捨つるがごとく

すれども、さらに目見立つる人なし。たまた

ま換ふるものは、金を軽くし、粟を重くす。

また、養和年間の

いない。二年間、 世の中

春夏が日照りだったり、ある

ないこと 続いて、五穀がみんな

行事だけがあって、秋に刈り入れ、冬

い。これによって、 諸国の農民は、 土地を

あるいは家を捨てて山に住んだりした。

朝廷では

いろいろな御

祈祷が始まって、なみなみではない御修法などがな

一向にその効果がない。京の習慣では、何をするにつけ

みな、もとは田舎を頼りにしているのに、まったく田舎から

るものがないので、どうし そう体裁ばかりつくろうことがで

きようか、いや、できない。心の中では早く立ち直ればいいと

願いつつ、いろいろな財物を片端から捨てるよう 安値で投げ

売りするが、いっこうに注目して高値で買ってくれる人も な

い。たまたま交換するものも、金銭のほうを軽く見て、穀物の

ほうを高値で扱う。乞食が路傍 多くなり、嘆き悲しむ声が耳

第5講『方丈