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がら、昔、 さめたてまつる

夜もすでに明けけ

帰らんとす。三位の中

ぢして物言ひし女房のゆく

ひたまへば、 「いまだ御わたり

内裏にわたらせたまふとこそ承り候

せば、

「さればこそ。 かかる身になりた

そのことがつねは忘られぬをば、いかがすべ

き」と たまへば、政時、 「やすき御ことに

候ふ。御文賜はつて、 参り候はん」と申せば、

三位の中将、 やがて文を書いてぞ賜はりける。

守護の武士ども 「いかなる御文にて候ふや

らん。出だしまゐらせじ」と申す。中将、

「見

せよ」とのたまへば、見せてげり。 「苦しう

候ふまじ て取らせけり。

政時、内裏へ参りたりけれども、昼 人目

もしげければ、その辺ちかき小屋にたち入り

ろいろなこ

夜もすでに明

する。三位の中将は

じていた女房の行方はど

まだお元気でお過ごしですが

いるとお聞きしております」と申

三位の中将

「案の定だ。このような捕らわれの身

がいつも忘れられないのを、どうしたらよ

るので、政時が、 「簡単なことでございます。

いて、それをもって私が内裏に参上しましょう」と

と、三位の中将は、すぐに手紙を書いてお与えになった

の武士たちが、 「どのようなお手紙 のでしょうか。

それを確

認しなければ

お出し申し上げるわけにはいきません」と申す。

中将が、 「見せよ」とおっしゃるので、

政時はお手紙を武士た

ちに

見せた。

武士たちは

「差し支えはないだろう」と言って返

し与えた。

政時は、内裏へ参上したけれども 昼間 人目も多いので、

その辺りに近い小屋に入って日が暮れるまで待ち、たそがれ時