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ありしあり 行くへ」と、こ

一首の歌ありける。

なみだ川うきなを

一たびの逢ふ瀬ともがな

女房、文をふところにひ 入れ

ことものたまはず。ただ泣くよりほ

ぞなき。ややありて御返事を書きたまふ

苦しくおぼつかなくて、二年を送りつる心の

うちを書きたまひて、

君ゆゑにわれもうきなをながすともそこ

の水屑とともになりなん

政時持ちて参りたり。 また守護の武士ども、

「見まゐらせん」と申せば、見せてげり。 「苦

しうも候ふまじ」とて参らする。中将、文を

見たまひて、いよいよ思ひや増さり け

ん、土肥の次郎に向かひてのたまひけるは、

「年ごろあひ知りたる女房に対面して、申し

悪い評判を

いものだと思い

女房は、手紙をふと

泣いてばかりいた。しば

く不安な状態で、二年を過ご

君ゆゑに

・・・

=あなたのために、私もよくない

たとしても、あなたとと に水底の水

政時は、

女房の手紙を

持って

中将のもとへ

参上した。また守

護している武士たちは、 「お手紙を拝見しよう

手紙を見せた。 「差し支えもございますまい」と言

手紙を

中将に

差し上げる。中将は、手紙をご覧になって、ますます思

いがましたのだろうか、土肥の次郎に向かっておっしゃった

とには、 「長年親しくしていた女房に対面して、お話し申した

いこ があるのは、どうしたらよいか」とおっ ゃるので、実

平は情け深い者で、 「本当に、女房などにお会いになるとのこ

とでいらっしゃいますなら、 何の差し支えがございましょうか」

と言ってお許し申し上げる。中将は、非常にお喜びになって、

人の車を借りて

女房を迎えに

参上させなさったところ、 女房は、