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て日を待ち て、 局の下り口

この人の声とおぼし

なかに、三位の中将殿

て、 大路をわたされたまふ

都を焼きたる罪のむくひ』と言

将もさぞ言はれし。 『わが心よりお

焼かねども、悪党おほかりしかば、手に

火を放ちて、おほくの堂舎を焼きはらふ。す

ゑの露もとの雫となるなれば、重衡一人の罪

業にこそならんずらめ』と言ひしが げにさ

とおぼゆる」とかきくどき、さめざめとぞ泣

かれける。政時、 「これに 思ひたまひける

ものを」とあはれにおぼえて、 「もの申さん」

と言へば、 「いづくより」と問ひたまふ。 「三

位中将殿より御文の候ふ」と申す。年ごろは

恥ぢて見えたまはぬ女房の、走り出で、手づ

から取つ たまへば、 「西国より捕はれて

にまぎれて

女房の

局の裏口の

いていたところ

女房の

声と思われて、

平家の

一門が

いる中で、三位の中

引き回されなさるのを、

報いだ』と言い合っている。

た。 『自分の考えから思いついて

たので、手に手に火を放って、多くの

の露が集まって木の幹の雫となるというか

になるであろう』と言ったのが、な ほどその

ます」とくどくどと繰り返して言い、さめざめとお

た。政時は、

「この

女房も

、中将殿を

恋い慕っておられるのだな」

としみじみと気の毒に思われて、 「もしご免くだ い」と言

と、 「どこから」とお尋ねになる。 「三位の中将殿よりお手紙が

ございます」と申す。長年人目を恥じ お会いにならない女房

が、走り出て、自分の手で

その手紙を

取ってご覧になると、 「西

国から捕らわれてきた様子、今日 明日とも知れない我が身の

行方」と、こまごまと書き続けて、末尾に一首 歌があった。

なみだ川

・・・

=つらい涙を流し、その涙の川に浮くような